西方音楽館

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3本足のルー
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S君の激動期


上:ル― 下:ナナ

 仔犬が生まれた時期は、S君の激動期とも重なりました。当時中3のS君は荒れまくり、私とは怒鳴り合い、取っ組み合いの日々でした。
 
 荒れの原因は、S君の性格にも起因するのですが、6歳下のR子の誕生と深く結び付いていました。
 
 R子の妊娠初期、私はつわりが重く入院したのですが、この時S君は私が死ぬのでは?と勘違いしたらしいです。退院後も私のつわりはひどく、離乳食のようなものばかり食べていました。つわりが治まってからも、高齢出産のためか体調はすぐれず、R子が生まれた後も体調不良が長く続きました。
 
 実はS君誕生後、私は過労で流産を3回続けて経験しました。R子の妊娠初期は、重いつわりで入院したお陰で安静を保つことができ、非常に危ういところで流産を免れました。
 
 流産の危機から逃れやっと生まれたR子ですが、食が細く、体のとても弱い子でした。赤ちゃんは丸々太っているもの、と思っていましたが、産婦人科退院後、みるみる骨と皮のやせぎす赤ちゃんになってしまいました。生後3カ月を過ぎると、毎月1回は風邪をひき、一旦風邪をひくとなかなか治らず、次第に体力を消耗し、このまま死んでしまうのでは?と危惧するほど弱ってしまいます。入院も2回ほど経験し、その度、私もつき添って病院に泊まりました。
 
 R子が生まれてからは、それまでのようにS君に手をかけてやるゆとりが無くなりました。だからS君にとってR子は、私の体を弱らせ、また私を奪った「憎きやつ」、後から来た「侵入者」だったのです。
 
 そんな思いを内に抱えて成長したS君、小学校高学年になるころから、荒れがひどくなり始めました。
 
 6年生のある日、学校を数日休んだS君。私は、十中八九このようなことに荒れの原因があるのだろうと確信し、S君と心を割って話してみました。「僕は、要らない子なんだ、と思っていた。」とS君。「寂しい思いをさせて、ごめんね」と、謝りました。
 
 しかし、そんなことで、S君の荒れは収まりませんでした。荒れた原因を私が認めたことで、自分は当然、あるいは必然的に、「荒れても良い」と、判断してしまったようでした。中学生になると、荒れはエスカレートしていきました。
 
 S君の標的になるのは、私とR子。幸い体の小さいS君。中学1,2年の頃は、力でも知恵でも、私はまだS君に勝っていたので、何とか対処できました。でもR子は6歳離れ、体も弱く小さく、知恵もS君より遥かに劣っていましたので、S君から受ける言葉の暴力、身体的暴力、双方にさらされ、とても可哀そうな状況でした。「R子なんて生まれてこなければ良かった。死んでしまえばいい。」というのが、R子の前で度々吐くS君の暴言でした。毎日毎日のS君と私との怒鳴り合い、取っ組み合いの喧嘩は、大半はR子の心と体を護るためのものでした。
 
 いくらやっつけられても、懲りることなく、S君を慕い、無邪気に言葉をかけ、一緒に遊びたがるR子でしたが、S君が中学生になりますます荒れがひどくなると、とうとう「お兄ちゃんに、なんて言葉をかけていいのか分からない・・・」と戸惑うほどになりました。
 
 でもある時、「お兄ちゃんはあんなだけれど、本当はR子のことが好きなんだよね?」と言います。どんなにやられても、R子はS君のことが好きでした。それだけが救いでした。
 
 私に対しては、激してハサミや包丁を持ち出すこともありました。「おどし」と分かっていても、怖いし、危険ですので、S君を激こうさせてはいけない、犯罪者にしてはいけない、と意を決し、一瞬冷静になり、こちらにハサミ、包丁を手渡すよう何度も何度も促し、受け取って、見えないところに片づけてから、また格闘を再開しました。
 
 「何のために勉強するのか分からない!何のために生きるのか分からない!二十歳までには死ぬ!」と言って暴れてもいました。私は、空手を習いに通いました。
 
 仔犬が生まれたのは、まさにそんな時でした。

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フォルテ・ピアノ
 篤志の方々のご寄付により、フォルテ・ピアノが、西方音楽館 木洩れ陽ホールに設置されました。
 クリストファー・クラーク1994年製
(A.ヴァルター1795年モデル)
 故小島芳子愛用の名器

 

 
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「3本足のルー」が完成しました。ルーが教えてくれたことは、「子供が育つ」ということ、さらに「人間が育つ」ということへの、励ましとヒントになりました。

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