オルガンホールを夢見て

学校法人 上野学園 東京文化会館 小ホール


2008年10月1日
 
学校法人 上野学園、東京文化会館 小ホール(イモジェン・クーパー)
 
 上野の山文化ゾーンフェステイバル 講演会シリーズの2「上野の音楽ホール物語~旧奏楽堂から新石橋メモリアルホールまで~」と題する永田穂さんの講演をカメラマンの早川さんと聴きに行きました。
  永田穂さんは本当にとてもすごい方で、どうして私のこんなに小さなホールに親身に関わってくださるのか不思議に思ってしまうような方です。永田音響設計を創立し日本の名だたるホールの大半を音響設計した方です。あげると限がありませんが、熊本県立劇場、福島市音楽堂、松本市音楽文化ホール、カザルスホール、サントリーホール、津田ホール、水戸芸術館、東京芸術劇場、岐阜サマランカホール、那須野が原ハーモニーホール、紀尾井ホール、すみだトリフォニーホール、トッパンホール等々。海外のホールの音響設計もなさっています。
講演会では、東京音楽学校奏楽堂、旧奏楽堂跡地に造られた東京芸術大学奏楽堂、東京文化会館の大ホール、小ホール、2010年開館予定の新石橋メモリアルホールについてお話をされました。講演の内容はここには納まりませんので、印象に残ったことだけ記します。
旧奏楽堂(東京音楽学校奏楽堂)の遮音は、解体して初めてわかったことですが、厚い壁のなかに木屑のようなものをたくさん詰めて行ったそうです。遮音の知識がほとんど無い時代、化学的な物質も無い時代、究極のグッドアイデアです。私の入学式は旧奏楽堂でしたし、大学の芸術祭ではコンサートを愉しんだ空間です。私の大好きな木造漆喰、板壁です。永田穂さんが東大生の時お聴きになって印象に残っていらっしゃるコンサートは、ヴァイオリン江藤俊哉、ピアノ園田高弘によるフランクのヴァイオリンソナタだそうです。この時はじめてこの曲を知り、こんなすごい曲があったのか、と深い感銘を受けたそうです。たくさんの音楽家を育てた空間でした。
旧奏楽堂跡地に造られた東京芸術大学奏楽堂は、幅広いジャンルに適応できるよう、なんと天井が3分割で可変します。永田穂さんの音響設計です。この発想の自由さ、大胆さが永田穂さんの魅力でもあります。
東京文化会館大ホールは、できた当初の評判は色々あったようですが、今では、非常に響きの良いホール、ここでしか耳にすることのできない暖かさと奥行き感のある響きを堪能できるホールとして、海外にもBUNKAKAIKANとして名前が通ってしまうホールになりました。この成功の謎は、施主(東京都)の姿勢、建築家前川国男氏のホール音響への関心と協力、NHK技研牧田康夫氏の音響的な考察と指導なのだそうです。永田さんはこの時、牧田さんの元でお仕事をしていらっしゃいました。前川氏はフランスでの経験はおありでしたが、牧田氏は海外での経験がなかったそうです!
経験というものは、確かにとても大切で重要なことですが、経験さえすれば、種々の考察力、洞察力、勘が養われるというものでもないのです。経験のない初めてのことでも、勘がよく働くということは案外あるものです。素直な純粋なこころ、曇りなき眼でことの事態を見据えると、経験の有無にかかわらず物事が見えてくるのだと思います。
東京文化会館の小ホールは永田さんがとてもお好きな空間で、演奏者との距離が近く、また音楽に浸れる落ち着いた空間なのだそうです。
新石橋メモリアルホールは旧石橋メモリアルホールの欠点を解消した、2010年完成予定のホールで、音響設計は永田音響設計です。旧石橋メモリアルホールは永田さんがNHKから独立して間もなく、音響設計を担当した、思い入れの深いホールだと思います。それがいともたやすく壊されてしまうというのは、寂しい限りだと思います(永田さんはそんなことは一言もおっしゃってませんが・・・)。
公演の後質疑応答がありました。最初控えめだった質疑ですが、永田さんのお答えがあまりにも気さくで正直で面白いので質問が殺到しました。早川さんは「質問者がうまくまとめられない質問内容を永田さんがまとめて答えている!」と驚いていました。
日本のホールは国際的に評価されているのだそうです。また東京のように一晩でいくつものコンサートが開かれている都市は海外にはないそうです。音楽文化を育てるために、音楽家を安く使わないでほしい、ともおっしゃってました。そのためにも、また人生を愉しむためにも(これは私の言葉ですが)、これをご覧の皆様、どうぞコンサートを愉しんでください、コンサートにいらしてください。
この講演会の後、永田さん、早川さん、私の3人で、ビールを片手に食事をし、色々なことを話し合いました。
さらにこの後3人で、永田さんが大好きな東京文化会館小ホールで、永田さんが大好きなピアニスト、イモジェン・クーパーのシューベルトを聴きました。音色も音楽も人を引きつけようとする姿勢が感じられず、強い自己主張がなく、それ故とても素直で気品のある、美しい演奏でした。こういう演奏なら私にも無理なく、見習うことができそうな気がしました。自分の音楽を打ち出しなさい、自己主張をしなさいという方向性では、私には素直に自分の音楽を心の内に探ることができません。
普段クラシック系の音楽にあまり触れる機会のない早川さんは大変勉強になりました!とのことです。講演の後、話し合い、コンサートと3つを楽々とこなす永田穂さん(80歳を越えてます)の体力にはいつもながら感服です。


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フォルテ・ピアノ
 篤志の方々のご寄付により、フォルテ・ピアノが、西方音楽館 木洩れ陽ホールに設置されました。
 クリストファー・クラーク1994年製
(A.ヴァルター1795年モデル)
 故小島芳子愛用の名器

 

 
 

館長のコーナー
 

まず、西方音楽館 木洩れ陽アップルパイ を販売します。

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「3本足のルー」が完成しました。ルーが教えてくれたことは、「子供が育つ」ということ、さらに「人間が育つ」ということへの、励ましとヒントになりました。

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リンク
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*ヒューテックの商品は、西方音楽館でも販売いたします